外食産業における特定技能1号の受け入れ停止とは?今後の採用戦略と現場が取るべき対応策
外食産業における特定技能1号の受け入れ停止とは?
今後の採用戦略と現場が取るべき対応策
外食業界で起きている「特定技能1号の受け入れ停止」の背景
なぜ今、外食分野で受け入れ制限がかかっているのか
外食業の特定技能1号において、現在「新規受け入れの事実上の停止」が起きている。正確には法改正による廃止ではなく、運用上の制限だ。しかし現場の採用担当者にとっては「制度はあるのに使えない」という深刻な状況であることに変わりはない。
背景にあるのは、分野ごとに設けられた「受け入れ上限(キャップ)」の問題だ。外食業の特定技能1号には全国で5万という上限が設定されており、制度開始以来、想定を上回るペースで外国人材が流入した。その結果、受け入れ枠に近づいたとして、出入国在留管理庁(入管庁)が新規の在留資格認定証明書(COE)の交付に慎重な姿勢をとるようになった。
外食業の特定技能制度は農林水産省所管の「外食業特定技能協議会」によって運営されている。この協議会の方針として、受け入れ超過が懸念される状況下では、新規入国・新規切り替えの申請が事実上絞られる運用が続いている。 重要なのは、この制限が「公式に発表された制度変更」ではなく「運用上の判断」であるという点だ。そのため情報が現場に届きにくく、「申請したのに通らない」「代理店から届かないと言われた」という混乱が生じている。
人手不足との矛盾と現場への影響
皮肉なことに、受け入れが制限されているまさにこの時期に、外食業界の人手不足は過去最悪水準に達している。求人を出しても応募が来ない、採用できても1〜2ヶ月で離職するという状況が常態化しており、外国人材への期待はむしろ高まっている。
現場への具体的な影響は以下の通りだ。
- 海外から新規で外食特定技能1号を招聘しようとしても、在留資格認定証明書(COE)が下りない
- 審査が長期化するケースが増えている採用計画が立てられず、既存スタッフへの負荷が増大している
- 外国人材の採用を諦め、慢性的な人員不足のまま営業を続けている店舗も多い
ただし、すべての採用ルートが閉ざされているわけではない。現在でも合法的に採用できるケースは存在する。次のセクションで実務的に使えるルートを整理する。
特定技能1号が停止しても採用できるケースとは
すでに外食で働いている外国人の転職は可能
結論から言う。すでに国内で「外食業の特定技能1号」として就労している外国人は、別の飲食企業へ転職(転籍)することができる。これは現時点でも制度上・運用上ともに認められており、受け入れ停止の影響を受けない。
受け入れ制限が主に影響しているのは、①海外からの新規入国、②他の在留資格(留学・技能実習など)からの切り替えという2つのケースだ。一方、すでに外食特定技能1号の在留資格を持つ人が企業間を移動するケースには、この制限は基本的に及ばない。
転籍採用を進める際のポイントは以下の通りだ。
- 転籍する本人の意思確認を必ず書面で行う
- 前雇用先との雇用契約が終了していることを確認する
- 採用後は「就労資格証明書」を取得しておくと、在留資格の有効性を公的に証明でき、後のトラブルを防げる
- 転籍後も登録支援機関によるサポート義務は継続する点に注意する
転籍採用は現時点で最もリスクが低く、即効性のある採用ルートだ。登録支援機関や人材紹介会社を通じて転籍希望者の情報を集めるネットワークを、今すぐ構築しておくことを強く勧める。
技能実習(給食センター)から外食への移行は認められている
もう一つ、実務的に重要なルートが「飲食料品製造業(給食センター等)の技能実習修了者を、外食業の特定技能1号として受け入れる」方法だ。
技能実習制度の「飲食料品製造業」分野では、給食センターや食品加工施設などで2〜3年の実習を修了した外国人が対象となる。この実習を修了した人材は、特定技能1号への在留資格切り替え時に、技能評価試験の一部が免除される仕組みになっている。
外食業の特定技能1号では「飲食物調理」「接客全般」「店舗管理」の3区分が定められているが、製造系の実習修了者でも食品衛生・調理の基礎知識を持つケースが多く、即戦力に近い人材を確保できるルートとして注目度が高まっている。
採用を進める際は、以下の点を必ず確認すること。
- 技能実習の修了証明書・実習実施者による評価書の内容
- 技能評価試験の免除対象に該当するかどうか
- 在留資格切り替えに必要な書類を早めに準備する
自社でも採用できるか、まず確認しませんか?
転籍採用・技能実習からの移行など、
貴社の状況に合ったルートを無料でご案内します。
特定技能2号という選択肢
外食分野における特定技能2号の位置づけ
特定技能制度には「1号」と「2号」の2種類がある。両者の最大の違いは在留期間の上限だ。
- 特定技能1号:通算5年という在留上限あり、家族帯同原則不可
- 特定技能2号:在留期間の上限なし(更新し続けることで事実上永続)、家族帯同可能
外食業は長らく特定技能2号の対象外だったが、2023年の制度改正によって対象分野に加わった。これは業界にとって非常に大きな転換点だ。人材の長期定着を重視する外食企業にとって、2号は採用・育成への投資に見合うリターンが期待できる在留資格となった。
1号の受け入れ制限が続く今こそ、2号を見据えた人材戦略を立てることが、中長期の経営安定につながる。
実務経験者が2号へ移行できる条件
特定技能2号へ移行するには、一定の実務経験と技能評価試験の合格が必要だ。主な要件は以下の通りである。
- 母国または海外における外食・飲食業の実務経験(目安:1年6ヶ月以上、実質的な目安は2年程度)
- 特定技能2号の技能評価試験(外食業)に合格すること
ここで重要なのは、特定技能1号の在留資格を必ずしも経由する必要はないという点である。 つまり、母国や第三国で十分な実務経験を積み、必要な試験に合格していれば、日本での実務経験がなくても、特定技能2号の在留資格を取得できる可能性がある。
採用戦略としての考え方
従来は、海外で外食経験を積んだ人材を特定技能1号として受け入れ、日本の現場で育成しながら2号への移行を目指す「段階的な採用モデル」が一般的であった。
しかし、特定技能1号の新規受け入れが制限されている現状では、このモデルは実務上取りづらくなっている。
そのため今後は、以下のような採用戦略への転換が求められる。
- 海外で十分な実務経験を有し、特定技能2号取得を前提とした即戦力人材の採用
- すでに国内に在留している外国人材(特定技能・技能実習修了者など)の活用
なお、特定技能1号を活用した段階的な育成ルート自体が完全に消滅したわけではないが、現状では採用難易度が高く、主軸戦略として位置づけるのは現実的ではない。
特定技能2号は、高度な技能と日本語能力が求められる一方で、在留期間の更新制限がなく、長期的に中核人材として活躍してもらえる可能性が高い。
そのため、「育成前提の採用」から「即戦力・定着前提の採用」へと戦略を転換できるかどうかが、今後の外食業界における人材確保の重要なポイントとなる。
今後の制度見通しと採用戦略
見直しは2028年まで行われない可能性
特定技能制度の分野別受け入れ目標値は、現在「2024〜2028年度の5年間」を対象とした枠組みで設定されている。外食業については、この枠組みが満了する2028年度末まで、受け入れ上限の大幅な見直しは行われない可能性が高い。
つまり、「制度が緩和されるのを待てばいい」という姿勢では、向こう数年間にわたって採用の手詰まりが続くことになる。今すぐ打てる手を打つことが、競合他社に差をつける唯一の方法だ。
特例措置による早期緩和の可能性
一方で、政府は深刻な人手不足への対策として規制緩和に動く可能性も否定できない。特に注目すべき動きは以下の通りだ。
- 受け入れ上限数値の引き上げ(特定産業分野ごとの見直し)
- 特定技能2号への移行促進に向けた制度整備
- 2027年をめどに施行される「育成就労制度」(旧・技能実習制度の後継)による外食分野への波及
特に育成就労制度への移行は、外食分野の人材受け入れルートを大きく再編する可能性がある。制度の動向を注視し、変化があった際に即応できる体制を整えておくことが重要だ。
今、企業が取るべきアクション
制度の不確実性が高い今だからこそ、確実に打てる手を優先して実行することが求められる。以下の3つを今すぐ取り組んでほしい。
① 転籍採用ネットワークを構築する
すでに外食特定技能1号として国内で就労している外国人との接点を持てるよう、登録支援機関・外国人材紹介会社・コミュニティとの連携を強化する。転籍採用は今この瞬間も使える、最もリスクの低い現実的なルートだ。
② 在籍中の外国人スタッフの特定技能2号移行を計画する
すでに特定技能1号で就労しているスタッフの実務経験・語学力・スキルを棚卸しし、2号試験に向けた育成・支援プランを今から立てる。1号の5年という期限が来る前に計画的に動くことが、長期定着の鍵となる。
③ 制度変更への即応体制を整える
入管制度は頻繁に変わる。信頼できる行政書士・登録支援機関と日頃から関係を作り、制度緩和の情報をいち早くキャッチできる体制を作っておくことが、採用機会を逃さない最大の防衛策だ。セミナーへの参加や業界団体との連携も、情報収集の手段として有効だ。
外国人採用について、まずは無料でご相談ください
転籍採用・2号移行支援・留学生活用など、貴社の課題に合わせた採用戦略を一緒に考えます。
採用担当者・経営者の方、どんな小さなご質問もお気軽にどうぞ。
